第7回例会議事内容

システムオブシステムズ研究会(第7回)報告

世話人 落水浩一郎

第7回システムオブシステムズ研究会を下記のとおり開催したので報告する.

日時:2019年6月10日 18:30~20:30

場所:ソニーシティ大崎 会議室

   〒141-0032 東京都品川区大崎2丁目10−1

  • 出席者(順不同)小笠原 秀人(千葉工大)、日下部 茂(長崎県立大)、艸薙 匠(東芝)、

栗田 太郎(ソニー)、新谷 勝利 (新谷ITコンサルティング) 、瀬尾 明志(日本ユニシス)、奈良 隆正(コンサル21世紀)、羽田 裕(日本電気通信システム)、端山 毅(NTTデータ)、方(ファン) 学芬 (SRA先端技術研究所) 、堀雅和(インテック)、矢嶋 健一(JTB)、

落水 浩一郎(UIT,世話人),

議事

  • 18:30~20:20 講演 Software and Systems Engineering

新谷 勝利 (新谷ITコンサルティング)

  •  DX(digital transformation)は、2025年問題(レガシーソフトが破滅する問題)と関連して議論されることが多いが、必ずしも適切ではない。JUASは、製品及びサービスの技術的側面と業務プロセス側面の2次元構造で調査・報告している。この構造でDXの進展を述べることが適切かどうかは分からないが、②でのべるプロセスの自動化において日本の多くの企業人は、日本はこの分野で大幅に遅れている/遅れつつあるとの見解を持っている。というか、従来のやり方を変える仕事の仕方を案出するのが苦手なのではなかろうか?
    • システムの定義とシステムズエンジニアリングの定義

システムズエンジニアリングとは、例えば、「予約→デザイン・生地選び・採寸→縫製→発送」

という一連のプロセスを設計・実現(自動化を含む)すること。従来、個々の作業の最適化を指向し、それらを結びつけ、新たな価値を生み出すより広く俯瞰的なプロセスでイノベーションにつながるように工夫することが不得意なのでは?

  • システムとは「個を結び付けたもの」という定義が長い間つかわれてきたが、INCOSEによりbehaviorとmeaningという二つのコンセプトをもとにした、新たな定義が検討されている。こここで、behavior は項目②の定義に該当する。meaningとは、概念モデルなどを指す。
    • INCOSEを中心とするシステムズエンジニアリングのソサイエティの構造は、アカデミックというより実務家の集合体である。ここでは、システムズエンジニアリングは実務家によるプロジェクトのベストプラクティスの集合であり、その意味で活動範囲が広く分散しており、それがまた、活力の源泉ともなっている。SEBoKは、そのベストプラクティスの集合、すなわちプロセスあるいはトピックスの体系化されたものであることを反映して、1000ページ以上にもわたる膨大な資料となっており、しかも年に二度も改訂されている。システムズエンジニアリングの活動に対する辞書であると位置づけると有益である。
    • SEBoKでは、システムは多くのディシプリン、ソフトウェアエンジニアリングはその内の主要な一つ、があって作られるとしており、よって、ソフトウェアエンジニアリングの成果はシステムズエンジニアリングに多く取り入れられている。例えば、SWEの90年代以降の成果(プロセスモデリング、MDD, アジャイルなど)をもってソフトウェアエンジニアリングの成果としている。70年代、80年代のソフトウェアエンジニアリングの成果(要求定義、アーキテクチャ設計、構成管理など)は、システムズエンジニアリングの成果として位置づけている。
    • 日本でシステムズエンジニアリングを教育・研究している大学は、INCOSEによる大学により提供されるコース及び学位の調査から、東工大、慶応、筑波、静岡、北九州大、青山学院大、中央大学など、諸外国に比べて圧倒的に少ない。多分、システムズエンジニアリングがカバーする範囲が広いが故に、それらの環境を持つ企業においてこそ社内人材の育成が容易とされたのかもしれない。ただし、日本企業の低い利益率を考えた時に、企業が広いディシプリンを含む社内教育を実施し得るかは議論を呼ぶところである。
    • SE Vision 2025が最後に紹介されたが、そこに記述されている状況に日本があるかどうかは極めて疑問である。悲観的でさえある。今後、色んな意味で価値創生が言われる社会において、日本における人材育成の現状はそのような期待に応えられないのではないか?
  • 20:20~20:30  今後の予定を以下のように決定した。
    • NTTデータの端山毅さんに新たにSIGSoSの会員として参加いただけることになった
    • 第8回:栗田さん「情報セキュリティに関する内外の動向」
    • 第9回:瀬尾さん「最近の中国、特に深センでのイノベーション活動の実態」