第9回例会議事録

システムオブシステムズ研究会(第9回)報告

報告者 瀬尾明志

第9回システムオブシステムズ研究会を下記のとおり開催したので報告する.

1.日時:2019年9月9日 18:30~21:00

2.場所:ソニーシティ大崎 会議室 〒141-0032 東京都品川区大崎2丁目10−1

  • 出席者(順不同)小笠原秀人(千葉工大)、艸薙匠(東芝)、栗田太郎(ソニー)、新谷勝利

(新谷ITコンサルティング) 、瀬尾明志(日本ユニシス)、端山毅(NTTデータ)、

方(ファン) 学芬 (SRA先端技術研究所) 、矢嶋健一(JTB)、落水浩一郎(UIT,世話人),

  • 議事

18:30~21:00 講演「深センでのイノベーション活動の実態」瀬尾明志 氏(日本ユニシス)

  • 講演の本題である深セン視察の話題に入る前に、なぜ深センを視察したのかについて説明があった。講演者の瀬尾氏は、所属企業において、長く技術経営を担当し、海外のテクノロジービジネスの動向をリサーチする立場にあり、その業務の一環として、今年1月に深センを視察したとのことであった。ITサービス企業における技術経営は、メーカーが製品ロードマップを描く(テクノロジーアウト的)のとは異なり、マーケット(顧客)を見て、どのようなテクノロジーを、どのタイミングで、どのような立ち位置で、どのような技術レベルで、提供できるようにしていくかが重要であるとのこと。
    • リサーチ会社IDCが提唱する第1~第3のプラットフォームの変化を用いて、IT業界の変遷の説明があった。第1のプラットフォーム(メインフレーム):IBMなどによる自社で研究開発を行った時代、第2のプラットフォーム(オープンシステム):HPやOracleによる企業買収により事業・企業を拡大していった時代、そして現在、第3のプラットフォーム(クラウドやビッグデータ):Amazon、Microsoft、Googleがすべてのテクノロジーを提供する時代に移りつつある。
    • 現在のIT業界の構造は、(1)メガクラウド事業者、(2)メガクラウド事業者になり切れていないメーカー、(3)メーカー、(4)ITサービス専門業者、(5)アプリケーションやSaaSの専門業者の5に分類できる。日本のIT企業のほとんどは(4)である。(4)では、コンサルティング企業の躍進が目立つ。
    • 広東省 深センは、40年前、貧しい小さな漁村だったが、経済特区に指定され、急速に発展(特に最近)。香港に近く、1月でも暖かい。面積は東京都と同じくらいだが、人口は東京より多い1400万人。地下鉄が11路線あり、交通インフラも整っている。環境対策に力を入れていて、バスやタクシーはほとんど電気自動車であり、緑や花が多く植樹されている。街が新しいので、中心部は新しいビルが多く、若い人が多い。
    • YouTube動画や写真を使って、深センの町の様子、秋葉原の何十倍もの規模の電気街、自動決済できる無人コンビニ、放置されるシェア自転車、ネットとリアルが融合したスーパーマーケットなどの紹介があった。
    • 深センは「ハードウェアのシリコンバレー」と言われ、「深センの1週間はシリコンバレーの1カ月」とも言われる。そのスピードを実現するための、ハードを開発する会社、スマホアプリを開発する会社、全体をコーディネートする人、国際特許をとる会社、などなど高速に新製品をローンチしていくためのエコシステムが整っている。
    • 深センには、ビジネスモデル上検討が不十分、システムの仕様上検討が不十分、安全性の対策が不十分、製造品質が不十分な状態でのチャレンジを許容する風土がある。そのような状態で実証的な本番をどんどんしていき、ダメなものは、どんどん淘汰されていく。製品やサービスの新陳代謝が段違いで早いのである。
    • 中国には、アメリカのGAFAに対応するテクノロジー企業BATHがある(Google≒バイドゥ、Amazon≒アリババ、Facebook≒テンセント、Apple≒ファーウェイ)。深センにはBATHのうちTとHの本社があり、BとAも重要拠点を置いている。iPhoneの製造メーカーである台湾のホンハイ(フォックスコン)の大規模工場もある。
    • 多くの深センのスタートアップ企業に共通した特徴はマネタイズしないことである。それらの企業はBATに買ってもらうことを目標としているので、マネタイズする必要がない。BATは南山区(深セン中心部)あたりのスタートアップを争うように買っている。
    • 深センにはBATHがあるため、優秀な人材が集まっていて、テンセントなどは日本の給与水準を上回っている。米国の大学を卒業したり、米国企業での勤務経験のある人が中国に戻ってくる海亀族も多い。
    • あらゆることがスマホでサービスされている。家電などの製品にも、サービスにも、レストランなどの店にもスマホアプリが用意されている。QRコード決済はどこでも利用できる。出張中、現金を持たずに、アリペイやWeChatペイだけで過ごすことが可能である。
    • テンセントはユーザ数10億人のWeChat(LINEのようなアプリ)の上で動くミニプログラムという仕組みを2018年にリリースした。ミニプログラムはスマホネイティブのアプリより開発が簡単で、とても広く使われている。それぞれの店が自分の店のミニプログラムを作っている。
    • 今の中国製品は性能も品質もデザインもアップルに引けを取らないレベルになっている。シャオミは多くの家電をシャオミブランドで出していて、どれもセンスが良い。ファーウェイのスマホはサムスンの最新スマホやiPhone XSと比べて、性能もデザインも質感も負けていない。
    • 中国でスタートアップの企業数やユニコーン企業数が一番多いのは、実は北京の中関村というところである。アカデミックな北京、マイクロソフトなど米国系が多い上海、自由な雰囲気の深セン。それぞれの主要都市に特色があり、中国全体でバランスが取れている。
  • 今後の予定

第10回:「システムズエンジニアリング体験ワークショップ紹介」、端山毅氏(NTTデータ) 

IPAが作成したシステムズエンジニアリングの概要紹介とグループ演習の資材について説明する。製品/サービスに対する期待や要請が高度化、複雑化し、システムを企画開発する上で検討すべき範囲が広がる状況に対して、システムズエンジニアリングがどのような考え方やアプローチを提起しているか、特に上流部分に重点を置き、事例や演習を通じて体感して頂くことを目指す。

第11回:VMSに基づいたプロジェクト管理システムのSoSへの適用(落水予定)

第12回:SoSとマイクロサービス(落水予定)